https://youtu.be/03va5qDFyzY
2017年1月14日 MOVIXさいたま
2016年作品
2016年作品
監督:山崎貴
三週連続での劇場鑑賞。
「ローグワン」「君の名は。」、そして今回は「海賊と呼ばれた男」だ。
どの映画もまったく毛色が違う作品であるが、今回も個人的には大当たりだった。原作は未読(百田作品は「永遠の0」のみ既読)なので、ストーリーを知らずに見た。
出光興産創業者、出光佐三をモデルとした「国岡商店」の店主、国岡鐵三の生涯を描いた物語である。
まずはその映像に圧倒された。
この手の映像を作らせたら、山崎貴監督&白組が第一人者と言って良いだろう。鑑賞中はどこまでが実写でどこまでがVFXなのか本当に境目が分からない。
これは技術的に感嘆したというよりその圧倒的なリアリティを作品全体に纏わせた功績が大きい。そしてその裏のスタッフの執念とも言える事前調査や監督の拘りを垣間見ることが出来る。
例えば、国岡商店所有のタンカー「日承丸」の進水式や外海を颯爽と進む様、冒頭の東京大空襲の焼夷弾の表現、各年代を再現した街の風景・・・CG技術ということさえ忘れさせるリアリティは一見の価値がある。
もう大分前になるが、初めて劇場で「ALWAYS三丁目の夕日」を見たときを思い出した(この作品も山崎貴監督&白組)。
ドラマ性も申し分ない。
時代が行ったり来たり前後する構成を取っているが、観る側に混乱させないような自然な場面転換だ。「三丁目の夕日」の時のような群像劇での自然な場面転換をやはり思い出す。
企業家の立身出世物語、巨大な敵に戦いを挑む構図は万人を惹きつける。
一般企業、とくに何かを売る仕事をしている人間が見ると、また違う熱い想いを感じるのではないか。
小さい成功、大きい成功、小さい失敗、大きな失敗・・これらの綾そのものが「仕事」である日常を過ごすものに取って胸が熱くなる瞬間が少なからずあるのだ。営業は断られた所から始まる・・を地でいく様な場面は胸が熱くなった。
そして経営者・起業家としての国岡鐵三の熱い魂も見所だ。
岡田准一の演技は噂に違わぬ素晴らしいもので、その魂が憑依したかの様な演技を見せてくれる。何よりその「声」の太さが素晴らしく、観客の心を掴む。
大きな見せ場はないが、妻役の綾瀬はるかも、文字通り「紅一点」として、物語に花を添えている。しかも驚きの「19歳」の役であったが、大きな違和感は無かった。
もちろん、その他のキャストもミスマッチが無く、映画全体を彩ってくれている。東雲演じる吉岡秀隆は「三丁目の夕日」の時の茶川先生そのままのキャラだったが、これは山崎監督ならではのオマージュだったのかもしれない(違うか(笑))。
そして個人的に特筆すべきは音楽だ。
劇中でその音を聞きながら確信し、エンドロールで確認。
やはり佐藤直紀氏が担当していた。
三丁目の夕日の音楽があまりに素晴らしくサウンドトラックを買ってしまった程。派手さは無いが印象的なメロディで映画に色彩を放ってくれるそのシンフォニックな音楽は、最近の映画にしては古風であるが、実は大好きなのである。山崎貴監督と佐藤直紀は日本のスピルバーグとジョンウイリアムスであるなぁ、と深く感じ次第である。
上映時間もやや長く大作であるが、現代を生きる「日本人」として観ておきたい一作に間違いない。
ここ最近「褒めまくり」のレビューばっかりだが、本当に良い作品を連続で見る事ができたと思っています。