Clouds Rest〜雲の上で

ヤフブロから移行(旧ハンドル:いぬどし)。 基本登山を中心とした山行記録、ギアなどの話。そのほか雑多な記事を書きます。

2007年02月

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ダイバー漂流

小出康太郎
新潮OH!文庫

海での漂流・・・救命ボート・食料があっても、大抵の遭難者は3日以内に死亡する。その原因は飢餓でも溺死でもなく、発狂死だ。
新島から銚子沖まで230キロ、3日間、太平洋上に首一つ出して漂流し救助されたダイバー。前代未聞の漂流。
その「謎」とも言える、漂流者の強靱な肉体、そして「精神」を取材、ルポとして伝える。
 
この手の本は本当に読むのが早い。あっという間だ。
しかし、漂流に関しては様々な本を読んだが、この内容は驚くべきものだった。
状況としては最悪で、通常助かる見込みはゼロに等しいだろう。事実、黒潮に乗ってしまった主人公は、銚子沖で本当に太平洋に向けて旅立ってしまう前に偶然に救助されたのである。
漂流で人間を死に誘うもの・・・それは、己の精神である。絶望という名の淵に身を投じてしまった方が楽・・・それ程の状況が、海での漂流である。その絶望的な状況で、しかも首一つ洋上に出しての漂流・・・まさに発狂しなかったのが奇跡的とも言える。
その、主人公の生い立ちや考え方を元に構成されているが、その状況ほど、悲惨な様相は無い文章なのが意外である。
これは、やはり主人公のキャラによるものだ。一言で「楽天的」といえば簡単だが、この様な極限状況で本当に楽天的になれるというのはまさに才能とも言える。
 
ありきたりな結びになるが、こういう本は何度読んでも「生きる」ことを深く考えさせられる。
 
しかし、この「新潮OH!文庫」、なかなか個性的なラインナップで楽しませてくれる。

(自分の読書データベースからの転載です、一部加筆修正しています)

追記

漂流モノ紹介シリーズ。
最近この手の本は見つけてないが、また読みたくなってきた。
しかし、自分の文章、巧いなー(笑)
 

2月25日現在・・・ノコ♂生存を確認

とりあえず霧吹き&ゼリー交換。

顎を少しだけ動かす程度ですが(寒かったし)生存を確認しました。

メスがいる筈なんですけど、土の中で生存か☆か・・・未確認です。

3月まであと少し。。

200記事達成をこのノコに捧げます(?)。

捧げるって・・まだ生きてますけど(汗)。

久々に読書熱がフツフツしてきた。

車通勤になってはや4年近く。
転職によるストレスと、単純に時間の問題で、読書量が極端に減った。

お決まりのセリフ。
「時間が無い・・・」

でも、それは本当に無いのではなく、それに割く時間を作っていない、だけなのだ。
量は読めなくても5分、10分という時間を作ることは可能な筈。

ということで本を買いに行きました☆


実は未読の本はまだあるのですが、こういうのは気分なので・・・
しかし「これは読まなきゃ」というのが・・あるわあるわ・・・
パッと見、20冊以上はカタイ。
でも、そんなに買っても・・・金がない。

なので1時間掛けて吟味し、以下4冊を購入しました。

殺人の門・東野圭吾

「容疑者Xの献身」が欲しかったけど、文庫化を待つことに。

FINE DAYS・本多孝好

本多孝好の本は未読を見かけると必ず買う。

影踏み・横山秀夫

ハズレナシってことで購入。

アヒルと鴨とコインロッカー・伊坂幸太郎

伊坂幸太郎の本は初めて。読みやすそうだったので。

1冊2-3週間程度を上限に読もうかと考えている。
最盛期は1週で2冊だったので、かなり遅いが、無理しても意味ないので。

まずは「殺人の門」から読みはじめることにする。

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クライマーズ・ハイ

横山秀夫
文春文庫

1985年8月12日、群馬県の山中、御巣鷹山に日本航空のジャンボ機が墜落。未曾有の大惨事になった。
地元群馬の地方紙、北関東新聞、通称北関の記者柚木は、翌13日同僚の安西と衝立岩の登攀の約束をしていた。
しかし、県内の未曾有の航空機事故により、柚木は安西との約束を果たすことが出来なかった。
しかし、その安西もその夜に脳卒中で倒れ、約束の場所に辿り着くことが出来なかった。「下るために登るんさ」という安西の言葉の意味を模索しながらも、柚木は日航事故の全権デスクを任され、否応なく渦中へと飲み込まれる。
世界最大の航空事故の紙面作り・・・のみでなく、組織の人間関係への不審、親子関係の葛藤、報道陣としての矜持、に全力で体当たりし、己の魂を削っていく。
17年後の安西の息子との登坂の場面を織り交ぜながら綴る入魂の傑作長編小説。

この本は結構前から注目していて、やっと読むことが出来た。
まずは山岳モノ・・・個人的に登山はやらないが、新田次郎や夢枕貘、植村直巳等、かなりの量を読んでいる。
そして日航機事故・・・この事故に関しては、この「クライマーズ・ハイ」を読んだ人の中でも上位5%には入る程の知識を持っていると自負出来る。個人的に興味を持ち、書籍は10冊以上読んでいるし、乗客名簿、ボイスレコーダーの記録と音声等あらゆる情報を得ている。
この二つの要素を考えても、まさに「俺が読まずして誰が読む?」といった塩梅だ。

しかし、上記二つの要素はあくまで設定である。
息詰まるほどの山岳冒険小説ではないし、御巣鷹山の事故に関する疑惑を新しい視点で描いている訳ではない。
地方新聞社に降って湧いた、未曾有の航空機事故に奮闘する新聞人の小説だ。
その臨場感、空気感は圧倒的である。
横山秀夫の小説であるから、その巧さは折り紙付きである。しかし、それを差し引いてもありえない、と感じてしまう。
それもその筈、その時代横山秀夫は群馬の上毛新聞の記者だったというのだ。
そういう意味で、彼にしか書けない小説であると言える。
この事故を題材にした小説は山崎豊子の「沈まぬ太陽」が、個人的にはナンバーワンである。しかし、取材を元に構築された物語はやはりどこかキレイだ。しかしこの「クライマーズ・ハイ」は、沸き立つ男くささ、汗くささが匂い立つような、生の臨場感にあふれているのだ。

横山秀夫の小説は基本的にハズレが無い。
その中でもこの作品はアタリ、と呼ぶに相応しい出来だろう。

ページ数:463
2007年2月24日読了

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漂流

吉村昭
新潮文庫

江戸時代,黒潮に流され絶海の孤島に漂着した4人の土佐の船乗りの凄絶なドキュメンタリー小説。
仲間が次々と倒れる中,主人公の長平は苦難の末何とか生き残ろうとする。
水も湧かずこれといった木々も生えない火山島。動物と言えば秋から春にかけて飛来するあほうどりのみ。長平に待ち受けていた苦難は飢えでも渇きでもなかった・・・それは深海の濃碧の如き「孤独」であった・・・。

極限状況に陥ったときまず人間が直面するのは肉体的苦痛である。それを乗り越えた先にあるのが精神的苦痛である。
ある者は発狂し,ある者は自らの命を絶つ。極限状態で必ずと言っていいほど出てくる病気に壊血病がある。
ビタミン不足による発症する病気である。これも,精神的にまいってしまい,磯に出て新鮮な魚介類を口にすることの無かった者が次々とかかって行く。仲間の死・・・凄絶な瞬間である。「たか号」漂流でも同じ様な場面があったが2人からひとりになるとき,残されたひとりはその最後の仲間の死体と一緒に何日も過ごす。
「希望」と「絶望」この2つの精神状態が生と死を分ける。
人は肉体のみにて生きるのではなく,やはり精神が伴い初めて生きることが出来るのである。

実際の資料は役人の作ったあくまで「記録」しかないそうなのであるが、この本は完全に小説である。主人公やそれを取り巻く人物は作中で会話を交わし、感情を露わにし、時には笑い、時には激しく憤る。勿論、記録を元に、著者が作り出したフィクションの味付けである。
このあたりが何とも絶妙だ。吉村氏の巧さ、が抜群に光っている。
内容に関しては文句無く、素晴らしい。個人的に興味のあるテーマを扱ったものであるが、誰が読んでも共感できるであろう。
おすすめである。
 
ページ数:431

(自分の読書データベースからの転載です、一部加筆修正しています)

漂流絡みで紹介してみた。
この手の本はまだまだあるので紹介していきたい。
でもやっぱり漂流は人生はともかく、海では絶対にいやだ。

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